ケイタロー
僕たちはゆっくりと走りはじめる
腕の振りを横目でたしかめ
歩幅をととのえ
息づかいに耳をすませる
いっしょに走る
軌道をまわる衛星のように
正確なタイムで
静かに周回をきざむ
ロープをもつ僕の手に
あなたの喜びが伝わる
ロープをもつあなたの手に
僕の喜びが伝わる
*
話し好きのあなたは
あふれる言葉を弾ませながら
軽やかに陽だまりをすすむ
僕は微笑みおしゃべりを楽しむ
寡黙なあなたは
流れる汗をぬぐいもせずに
黙々と炎天の下をすすむ
僕は太陽を見上げ沈黙を楽しむ
色づく落葉が肩に舞いおちるときも
凍てつく風が走路を吹きぬけるときも
僕たちは走る
いっしょに走る
仲のよい双子のように
あなたをそっと見る
僕をそっと感じる
ロープをもつ僕の手に
あなたのすべてが伝わる
ロープをもつあなたの手に
僕のすべてが伝わる
本文終わり