和田選手、決勝でも日本記録を更新し6位入賞

リオパラリンピック陸上、大会6日目9月13日のT11男子1500m決勝に出場した和田伸也選手は、予選でマークした日本記録をさらに書き換える4分15秒62で6位入賞を果たしました。

これまで、パラリンピックの視覚障害全盲1500mでは、現在のクラス分けの名称・制度(T11クラス)になった2000シドニー大会以降、日本選手でこの種目に出場したのは、2012ロンドン大会・2016リオ大会の和田選手のみ。
もちろん、予選が行われた2ラウンド制以上の大会で、決勝に進出したのも和田選手が初です(世界選手権では、谷口真大選手が2013リヨン大会で同様の内容を達成)。

大会初日の5000mでは、強力なライバル勢に屈し、6位入賞にとどまった和田選手。4日目の1500m予選では、格上のライバル選手との勝負所での対決を制して、決勝進出最後の1枠を勝ち取り、1500mでの目標を達成しました。

しかし、決勝に残ったといっても、そこから中4日でマラソン。連戦の疲労が気になるところですが、この種目でのさらなる結果を求めて、決勝に挑みます。

ところで、中長距離種目の決勝レースの多くでは、果敢に勝負に出た結果、力尽きてしまう選手が出てくることがあります。

この決勝では、他の選手との実力差がある和田選手、オーバーペースでメダル争いの選手を追いかけての自滅で、予想より大きく遅れてきた選手に勝つチャンスを失うことを避けるべく、自分のレースをすることを選択します。

まずは、予選での日本記録を上回ることを目指し、そのための適切なペースで走る、そして、チャンスがあれば1つでも上の順位に挑戦することを目標とした和田選手、最初の200mを33秒、400mを1分07秒と自分のペースでスタートします。

その後、800mが2分15秒、1200mは3分25秒で通過すると、最後のスパートが効いて、予選のタイムを0秒50上回る4分15秒62の日本記録。
和田選手よりも上の順位の選手が、互いに譲らぬ大接戦を展開したため、和田選手の順位は上がりませんでしたが、日本記録再度更新の目標を達成しました。

39歳で1500mの自己記録を更新した和田選手、走力強化の成果であることはもちろんですが、適切なペースでレースを進めることができる(あるいは、トレーニングの成果でそれをできるようにしている)ことが、今でもこの種目で伸び続けている要因でしょう。

‐補足‐
『陸上競技マガジン』2016年10月号(ベースボールマガジン社)p.182に、1500mレースでの各周回のペースが記載されています。

それによると、フィニッシュタイムに対し、各1周のタイムが、1周目25.9%・2周目27.1%・3周目27.5%・ラスト300m19.6%となっており、フィニッシュタイム4分15秒なら、400m1分06秒・800m2分15秒・1200m3分25秒。

日頃からペースを意識して練習しているランナーであれば、最初の300mを少し余裕をもって入ることを心掛けると、自ずと、このようなペースになるかと思います。

【ムシャイ選手、5000mに続き金】

観衆の期待と歓声を受けた地元ブラジルのオダイル・サントス選手は、5000mで敗れたサムエル・ムシャイ・キマニ(ケニア)選手に、ラスト1周の時点で10mリード。
しかし、徐々に差を詰められると、世界記録保持者キマニ選手のラスト150mからのスパートで、逆転されるのも時間の問題に。

惜しくも、世界選手権8個の金メダリストは、2004アテネ大会から出場しているパラリンピックでの、初の金メダルはなりませんでしたが、4分03秒25の自己ベストまで0秒21に迫る走りでした。

なお、サントス選手は、今大会の銀メダル2を含め、障害が今より軽度だったT12,T13時代も含め、パラリンピックでは銀5・銅4を獲得したことになります。

金メダルに輝いたのは、2011クライストチャーチ世界選手権でサントス選手に敗れて以来、サントス選手に勝つことを目標としてきたムシャイ選手。
2012ロンドンパラに続き、この大会でもサントス選手に勝利したムシャイ選手は、ラスト1周を61秒でカバーしての4分03秒25で、両手を上げてフィニッシュラインを駆け抜けて行きました。

銅メダルは、あと1周の鐘と同時に3位に上がってきたセミー・デニス選手(トルコ)。
2012年にT13クラスで4分01秒91、2013年にT12クラスで4分05秒46をマークしていましたが、障害が重くなったT11クラスになっても、その走力を復活させての4分05秒42。

そして、それに続くメダル圏外の選手も素晴らしい走りを見せました。
今大会出場した2レース(5000決勝・1500予選)同様、号砲と共にスタートダッシュを見せて、まずは先頭を取り、好位置でレースを進めたウィルソン・ビー選手(ケニア)が、自己記録を10秒も更新しての4位。

5000mではメダル候補の一人だったものの、1500mに絞ってきたジェイソン・ジョセフ・ダンカリー選手(カナダ)は、あと200mでビー選手を抜いて4位に上がるも、最後はわずか0秒02差で敗れて5位。
39歳のダンカリー選手がマークした記録は、自己記録4分07秒56に0秒42及ばないだけでしたが、この自己記録は、前回の2012ロンドンパラで自身が銅メダルを獲得した時にマークしたものでした。

このように、T11男子1500mは、現在のシステムになった2000シドニー大会以降、最高のレベルとなったこともあり、和田選手は6位にとどまりましたが、記録・内容ともに価値ある内容でした。

【公式結果】
T11男子1500m決勝 競技開始9月13日18時05分(現地時間)
1位 サムエル・ムシャイ・キマニ(ケニア)4分03秒25
2位 オダイル・サントス(ブラジル)4分03秒85
3位 セミー・デニス(トルコ)4分05秒62
4位 ウィルソン・ビー(ケニア)4分07秒96
5位 ジョイソン・ジョセフ・ダンカーリー(カナダ)4分07秒98
6位 和田伸也(日本)4分15秒62

[先頭の通過]
400m ビー 1分05秒43
800m サントス 2分11秒53
1200m サントス 3分16秒74

[グラウンドコンディション]
天候晴 気温35度 湿度30% 

[公式結果へのリンク]
https://www.paralympic.org/static/info/rio-2016/resIPC/pdf/PG2016/AT/PG2016_AT_C73G_ATM911101.pdf