「第36回篠山ABCマラソン大会」宗平さんの完走記です

第36回篠山ABCマラソンに参加した。
フルマラソンを走るのは、一昨年の福知山、昨年の神戸に続いて3回目である。
福知山でも神戸でも30キロを超えたあたりで足が動かなくなって歩いてしまったので、今回は歩かずに完走したいという思いがあった。
ネットタイムの目標としては、福知山が4時間58分、神戸が4時間45分だったので、やはりここは4時間30分を目標にして、なんとかサブ4.5を目指したい。
それと、もう一つ今回新しい試みがある。
実は妻からの誕生日プレゼントにGPSボイスコーチなるものを買ってもらった。
これはわーわーずメンバーの中でも最近持ち始めている人が増えているもので、僕も体験させてもらって、一つほしいなぁと思うようになった。
何キロ走ったかや、ペースはどのくらいで走っているかなどを登録した設定にしたがって音声で教えてくれるのだ。
これを帽子に付けてレースに出るのは初めてとなるので、わくわくである。
今回の伴走は、平日の夜練にも付き合っていただいているとんさんだ。
とんさんにとっては篠山マラソンは過去に何度も走られたマラソンだということで、たいへん心強い。

会場まではマラソンバスも出ているようだが、とんさんが車を出してくださるとのことで、朝5時に迎えに来ていただいた。
さすがに4時20分起床はきつかったが、思ったより目覚めはよいようだ。
とんさんのご友人ともご一緒させていただいて、3人で亀岡経由で篠山へと向かった。
道はすいていて、6時40分に到着した。

さて、走り出すのは10時50分だから、おっと、まだ4時間以上あるではないか!
どうやって時間をつぶそうか。
市役所のロビーに荷物場所を確保して、散歩に出かけることにした。
少し空気はひんやりしているものの、3月としてはかなり暖かいようである。
天気予報では、うまい具合にこの日だけ雨マークとなっていた。
ほんとうまい具合に。なんでやねん!
しかも、この篠山マラソンは雨になることが多いマラソンのようで、昨年はひどい本降りの寒いレースだったと聞かされていたので、それなりに覚悟して臨むことにした。
7時を過ぎて、広場にはどんどん人が増えてきて、おにぎり・うどん・唐揚げなどあちこちから屋台の美味しそうなにおいが漂ってくる。
このマラソンは、事前にゼッケンやICチップが送られてきて、受付は必要ないというありがたい大会である。
前日受付のマラソンはやはりどうにもめんどくさい。
7時半に大会Tシャツをもらったら、でかんしょ節の歌詞がプリントされていて、丹波篠山感がよく出ている。
京都キャロットの店が出ていて、いろんなランニングアイテムが安値で販売されていた。
今履いているランニングシューズはそろそろ3年ほど履いているだろうか。
走り心地はいいので、ずっと履き続けているのだが、随分すり減ってきているのもたしかなので、とんさんの勧めてくれたアシックスのシューズを買うことにした。
1万何千円のものが6900円で買えたのでお買い得である。
それから、これまたとんさんが以前より一つ持ってたらいいんじゃないかと言っていたアームウォーマーもゲットした。

持ってきていた十六穀米おにぎりを食べて、腹ごなし。
さて、誰か知り合いは来てないかなと思い、再びとんさんとぶらぶらしていると、オリーブさん、ヨッシーさん、福場さん&ミントまっちゃんペア、カモパの方々といった具合に会うことができた。
1万人規模のレースの人混みの中、やはり知り合いに会えるのはなんとも嬉しい瞬間であり、落ち着ける瞬間でもあり、パワーをもらえる瞬間でもあるのだ。

いよいよ10時50分がやってきた。
申込時の申告タイムにより、一番後ろのDブロックからの出発だったので、ピストルがなってからスタートラインに行くまでに6分40秒かかった。
今回の目標である、ネットタイム4時間30分を切るために、1キロあたり6分15秒では行けるようにしたいなぁととんさんと話していた。
そうこうしていると、帽子に付けているGPSボイスコーチがアナウンスをしている。
1キロ通過。
うん、このガイドはありがたい!
やはり、人だらけで思うようには走れないが、そんなときによく見知らぬランナーが「頑張ってくださいね」など言ってくださって嬉しいものである。
そしてまたボイスコーチのアナウンスが聞こえてくる。
「距離2キロ。ラップタイム5分45秒。」
この1キロは予定していた6分15秒よりもだいぶ速くなっている。
少しペースをゆるめるが、混雑をうまく二人分の幅ですり抜けていくには多少ペースを上げて抜いていく必要もあり、少し速いペースになりがちになる。
それにしても、とんさんはさすが慣れたもので、うまい具合に「右から抜かせてください」と言って混雑をすり抜けていく。
なかなか6分15秒のペースには戻せないのだが、まぁ自然なペースで無理をしている感じでもなく、とんさんも6分15秒にぜひとも戻そうという感じでもないように思えたので、おおよそ5分50秒台で進むことにした。
「このペースでずっと行けるといいですね」と言うと、とんさん曰く「30キロまでは行けるでしょう」
なんとも重みのある言葉だ。
田んぼや住宅街が続くおおむね平坦なコースで、混雑していることを別にすれば、わりあい走りやすい。
最高気温はやはりこの時期としては暖かい18度になるとのことであったが、結構風が吹いていて、暑いという感じではない。
雨もなんとかもってくれていて、コンディションは思っていたよりもよさそうだ。

事前に、とんさんに走るコースの地図を説明してもらっていたので、なんとなくのイメージができて助かった。
やはり、地形や景色や方角などどんなところを走っているのかがわかった方がおもしろさは倍増する。
それから、今回はHPで過去に走られた人の感想をいくつか読んで、17キロ地点に恒例のブラバン応援隊がいること、20数キロのところに丹波黒豆おにぎりの私設エイドがあるという情報を得ていた。
こういったものを楽しみに走れたらこれまたおもしろさ倍増である。

5分50秒のペースで、16キロまでやってきた。いい調子だ!
しばらくして、太鼓の音が聞こえてきた。
「あれ?17キロにブラバン応援隊がいると聞いていたが、今年は太鼓隊に変わってるのかな?」と思いながら通過した。
いやいや、そんなことはないようで、17キロを通過したら、大所帯のブラバン隊が元気よく「ランナー」を演奏していた。
「走る~走る~おれ~た~ち」と思わず歌い出したくなる。
やはり、この歌は定番ながら元気が出る曲だ。

20キロに近づいてきたところで、とんさんが「有森さんがいるから手を右に出して」と言う。
そして、有森裕子さんとハイタッチ!
有森さんはランナー一人ひとりに「頑張ってください」と言ってハイタッチしてくださるのだ。
いやぁ、嬉しい!俄然やる気が出てくる。

そんなこんなのおかげで、ハーフ地点でも5分50秒のペースを保てている。
ここで、とんさんが腕が痛くなってきたので、ロープを持つ手を逆にしてほしいと言う。
「いいですよ」と言って、右手でロープを持って走り始めたのだが、実は右手でロープを持つのは初めてのことであり、どうにも走りにくい。
しばらくすると慣れるかなと思って2キロぐらい走ったと思うのだが、どうも左肩もこってきて、これはまずいという感じになってきたので、やはりロープは左手で持たせてもらうことにした。
後ろから「宗平さん」と呼んでくれている。
おぉ、たかちゃんだ。
久しぶりに仲間の声を聞けて、それだけで随分大きなパワーになる。

さて、20数キロのところに出ているという話のあった、丹波黒豆おにぎりの私設エイドはまだかいな~。
と思っていたとき、とんさんが「おにぎりのエイドがある」と。
おぉ、待ってました~!
まずはとんさんがお茶を渡してくれて…「あれ…おにぎりがないみたいだね~」
「そ、そんなぁ~」
テンションがた落ちである。
売り切れてしまったのか。
おにぎりの恨みは大きいゾ!おいっ!
気持ち的にとぼとぼ走りになってしまう。
しかし、篠山のみなさん、そんなことでは終わらせないぞということで(かどうかはわからないけれど)、またおにぎりの私設エイドがあり、今度は子どもが配ってくれている黒豆おにぎりをゲットした。
うまい!俄然やる気が出てくる。単純なものだが、食いしん坊の僕にはこれがあるかないかで大違いなのだ。

24キロのところに、このマラソンの名物であるしし汁のエイドがある。
これはぜひ飲みたいのだけれど、器とお箸でしっかり食べるようなものであり、食べるのに結構時間がかかるのでどうしようかと思っていたところである。
ただ、このしし汁、ゴールした後にも振る舞ってくれるというので、そちらでゆっくりいただくことにして、スルーすることにした。
ゲストのかつみ・さゆりのさゆりの甲高い応援の声が聞こえる。
ゲストランナーの野々村真は速すぎて姿すら見えないのだろう。

25キロからは5キロゆるやかに上って、5キロゆるやかに下る折り返しコースが始まる。
なので、全体的にランナー密度が高くなって、走りにくくはなるが活気はある。
と、対抗レーンから「宗平くーん」というひときわ大きい叫び声が聞こえてくる。
やはり、てらやんの声は迫力がある。
長井さん&てらやんペアは、10キロほど前を行ってるのだから、やはり速い!

さて、28キロのあたりで、ついに腰のあたりに違和感が出始めた。
福知山や神戸のときにはハーフを超えてわりとすぐに痛みが出始めたので、多少は遅らせることはできただろうか。
ただ、これまでは足首やふくらはぎから痛みが出ることが多かったのだが、今回はなぜか腰からだ。
スクワットをして少しはトレーニングをしたつもりだが、まぁどこから痛み始めるかはその時々で違うようである。

30キロを超えてなんとかまだ5分50秒のペースで走っている。
エイドで給水して停まると、足の痛みがひどくなるので、エイドをパスした方がいいのかなと思わなくもないのだが、やはりスポーツドリンクはとることにした。
私設エイドがたくさんあって、飴やチョコレートや梅干しなんかもいただきながら走っているのだが、どんどん足が重くなってきて、うーん、「1キロが果てしなく長く感じられる」ゾーンに突入してしまった。
おにぎりのエイドがあったのだが、「いらない」と言ってしまった。
なぜだ!おにぎりのエイドなら真っ先に飛びつくはずなのに。
食をこよなく愛する僕にとって、食欲がないというのは重症だ。
風邪をひいても食欲はいつでも万全なのに。

そして、34.5キロ。ついに今回もやってきてしまった…足がどうにも動かない。
なんでこうなるの…と思いながらも、しばし歩かせてもらうことにした。
うーん、今回も歩いてしまったかぁ!
とぼとぼ歩くこと1キロ以上。
GPSボイスコーチによると、1キロ10分のペースらしい。
隣で歩いてるおっちゃん曰く「もう、はよ終わりたいなぁ」「ほんまにねぇ」なんてなやりとりをして、その場をやり過ごした。
次の給水ポイントまで歩かせてもらうことにした。
エイドを出るときに、後ろから元気な声が。
ヨッシーさんが見つけてくれて、力強いエールをくれた。
そのおかげで、少し元気が出てきたので、再び走り出した。
すると、とんさんが「痛い」と言って停まってしまった。
ふくらはぎがピクピクして走れないのだという。
伴走ボランティアではなくパートナーとして走っているわけだから、伴走者の方に故障が起こって、二人で対処するということもやはり大事なことだろう。
「無理せずに歩きましょう!」と言って、もう少し歩くことにした。
ちょうどとんさんのご友人の方が通りかかられたので、少しだけその方にロープを持ってもらったのだが、とんさんのすごいところは、そのわずかな時間の間に、長年の経験に基づいて足を動かすことによって、とりあえずの復活を果たされたということだ。
かなり痛いということのようであったが、それをどのようにして治されたのかはやはり経験のなせるわざなのだろう。

そして、37キロあたりから最後の5キロを走り出した。
しかしまぁ、痛む足にとっては「1キロが果てしなく長く感じられる」ゾーンは続いていて、GPSボイスコーチが1キロ通過を示す音が待ち遠しくて仕方がなかった。
まだかいな、まだかいな…といった具合に。
「がんばれ!がんばれ!おかえり!」など沿道から様々なる声援を送ってくれて
いるのだが、とてもじゃないけれど、返す気力がない。
ついには横腹まで痛くなってきて、「おい、もう十分頑張ったので、これでよしとしてくれぇ」なんて沿道に叫びたい気分である。
40キロまで来たのに、まだ嬉しさが感じられない。
GPSボイスコーチをスタートラインから計測すればよかったのかもしれないが、そこから数100メートル手前で並んでいたところから開始してしまったため、ボイスコーチが40キロだと告げていても実はまだ40キロには数100メートル達していないのだ。
うーん、ただだましだまし足を動かすだけの苦行が続く。
給水をとる気力もない…というか、エイドで足を停めてしまうともう走れなくなりそうでもあったのだ。
ボイスコーチが42キロと言ったとき、ようやくこの苦行の終わりが見えたように感じた。
ところが、その数100メートルも実に辛く、「はよ終わろ!」と思ったその時、うしろから「宗平、とんさん」という元気な声。
おぉ、ここで登場か、オリーブさんだ。
元気に颯爽と駆け抜けてゴールインされた。
その元気をもらって、我らもなんとかゴールイン!
グロスタイム4時間35分44秒、ネットタイム4時間29分3秒だった。
ネットタイム4時間半はもう厳しいと思っていたので、やったぁである。
前半のいわゆる貯金のおかげだ。
1キロあたり5分50秒がよかったのかどうかわからないが、それほど無理な感じでもなく、自然な感じだったし、逆に1キロ6分15秒で走ってたとしても35キロあたりでやはり足は痛くなっていたかもしれないので、まぁこれで今の自分のベストにはなったのではないかなと思う。
歩かずにゴールという目標は次回になったが、やはり持久力不足は否めない。

学生さんに完走メダルをかけてもらうととにかく嬉しい気持ちと、ほっとやれやれの心地よい疲労感に包まれる。
このメダル、丹波焼きで作られているそうで、ここにも篠山らしさがよく出ているのだ。
さて、ゴールした後のお楽しみにとっておいたのがしし汁だ。
が、やはりみんなこれを楽しみにしているから長蛇の列で30分はかかりそうだ。
しばし休憩と着替えをしに行ってから、再度チャレンジすると、もうすいていてラッキーなタイミング!
うーん、具だくさんの豚汁風で実に美味しい!
完走後だから一層美味しい!
足が痛いとんさんにご無理を言って、黒豆ソフトクリームを食べて、黒豆ひねり餅をお土産に買って、家路についた。
帰ってきたら、文字通りばたんきゅー!
いやぁ、フルマラソン42キロはまだまだ長い旅だ。
ようやく余韻にひたりながら…あぁ、来シーズンは何に出ようかな。
とんさん、辛くも楽しい篠山お世話になりました&ありがとう!