山田選手、2016パラトライアスロン世界選手権(ロッテルダム@蘭)でライバル選手らと鎬を削る

7月24日、オランダのロッテルダムで行われた2016パラトライアスロン世界選手権で、視覚障害PT5女子クラスに出場した山田敦子選手は7位に入りました。
総合タイムは、バイクのコースが直角カーブやUターンの連続だったことも影響し、1時間23分04秒(補正タイム3分48秒含む)でした。

なお、視覚障害選手は、ガイド・選手が前後に乗る車体の長いタンデムバイクを使用するため、PT5クラスの選手にとって、今大会のコースは特に難度の高いものだったことでしょう。

[注]補正タイムについて
パラトライアスロンの視覚障害クラスでは、全盲と弱視の選手が出場する場合、弱視の選手は全盲選手の一定時間後にスタートする。女子の場合は、2016年現在、3分48秒後のスタートとされている。

今回の世界選手権は、1ヵ月半後のパラリンピックに照準を合わせるためか、出場を見合わせたトップ選手もいましたが、それでも、PT5女子の出場選手の顔ぶれを見ると、世界選手権の名称にふさわしいメンバーが十分に揃いました。

■レース展開
[7位を死守した山田選手]

山田選手の目下のライバルは、同じくパラリンピック出場を決めているキャサリン・ウォルシュ(アイルランド)、クリスチーン・ロビンス(カナダ)の両選手。

山田選手が、これら2選手との競り合いを制すには、両選手に対し一歩抜きん出ているスイムでリードして、優位にレースを運びたいところです。

スイム750mを4番目のタイム(1名の全盲選手が先にスタートしており、スイム通過は5位)で終えた山田選手、バイクへのトランジットで6位に下がりますが、ウォルシュ選手には3分弱のリード。

このウォルシュ選手、バイクではこのクラスでトップクラスの実力を持つ選手。2012年ロンドンパラリンピックの自転車競技では、銀・銅と2つのメダルを獲得しています。

今年、バイクとランの実力を大きく伸ばしてきた山田選手は、総合力ではウォルシュ選手と差がなくなってきたものの、今季の対戦成績は0勝2敗。
いずれも、バイクコースに起伏がある大会での敗戦で、両対戦とも、バイクのセクションタイムでは5分以上の差がありました。

今回のバイクコースは、コーナが多いテクニカルなものですが、目立った起伏はありません。
平坦なコースで好タイムをマークするようになった山田選手、ウォルシュ選手に少しでもリードしてランに入りたいところです。

しかし、やはり地力あるウォルシュ選手、バイクパートで2番目のセクションタイムをマークして、終盤で山田選手を逆転します。

とはいっても、山田選手は、ウォルシュ選手とのバイクでのセクションタイム差を、今回は3分少々にとどめたことで、バイク終了時点でのビハインドは40秒。
そして、再逆転を狙うべくトランジットで差を詰めて、ラン5kに入った時には、逃げるウォルシュ選手との差をわずか15秒とします。

ところが、この大会は15時30分競技開始。北緯52度にあるロッテルダムは、日没が22時前。フィニッシュの17時前になっても陽は高く、気温はこの日最高の25度のまま。

追走して、ウォルシュ選手にプレッシャーをかけたい山田選手ですが、この暑さの影響もあったのか、ランでのスピードが上がりません。
中盤にはウォルシュ選手に差を1分にまで広げられる一方、ラン開始時には2分半少々の差をつけていたロビンス選手が迫ってきます。

ロビンス選手とは今季1勝1敗の山田選手、パラリンピックでの対戦ではロビンス選手に勝ち越した状況で臨みたいところを、最後の力を振り絞ってこのポジションを死守し、30秒差で7位に入りました。

[スペシャリストが持ち味を発揮した優勝争い]

ところで一方、優勝争いは、バイク・ランのそれぞれのスペシャリストがその能力を発揮した素晴らしいものとなりました。

3選手がほぼ同時に先頭で入ったバイクセクション、ここで抜け出したのが、2010パラサイクリング世界選手権金メダリスト、地元オランダの全盲選手、ジョリーン・ハッカー選手。
バイクセクショントップのタイムをマークし、後続に1分半以上の差をつけます。

しかし、ランに入ると、今度は、2007IBSAワールドゲームズ800m金メダリスト、アリソン・パトリック選手(イギリス)が、その走力を見せつけます。

バイクでハッカー選手に2分弱の差をつけられ、3位でランに入ったパトリック選手ですが、すぐにメリッサ・リード選手(イギリス)、中盤過ぎにハッカー選手を抜いてトップに立ち、5kを19分25秒でカバーして逆転優勝。

これで、2014年世界選手権から10戦8勝(うち途中棄権1/この間の唯一の敗戦は2015世界選手権)となり、パラリンピック金メダル候補のうちの一人であることをアピールしました。

なお、2位はハッカー選手、3位はリード選手でした。

■公式結果
1位 アリソン・パトリック(イギリス)1時間12分50秒
2位 ジョリーン・ハッカー(オランダ)1時間13分14秒
3位 メリッサ・リード(イギリス)  1時間14分31秒
7位 山田敦子(日本)        1時間23分04秒 
[山田敦子/各セクションタイム]
スイム(750m) 13分51秒
トランジット1  3分18秒
バイク(19.6k) 37分07秒
トランジット2  0分29秒
ラン(5k)   24分31秒
補正タイム    3分48秒

■大会公式サイト
http://www.triathlon.org/events/event/2016_rotterdam_itu_paratriathlon_world_championships