2月7日日曜に行われた2016別府大分毎日マラソン、今大会はパラリンピックマラソン代表最終選考レースとしても実施され、その代表選考レースのIPCの男子の部に、長居わーわーずからは和田伸也選手と福永智洋選手が出場しました。
まずは、代表推薦枠の最後の1つを、2015IPCマラソン世界選手権5位(2時間37分48秒)の熊谷豊選手と争うことになると目された和田選手。
その座を和田選手が獲得するには、熊谷選手より先着したうえで、熊谷選手が2015IPCマラソン世界選手権(ロンドン)でマークしたそのタイムを上回ることが求められました。
両者の争いは予想通りに激しいものとなりましたが、軍配は、2時間33分46秒(男子T11日本記録)をマークした和田選手に上がり、和田選手が代表推薦枠の最後の1つを獲得しました。
なお、パラリンピックの視覚障害マラソンで、各国に割り当てられる選手枠は原則3名ですが、代表の正式決定は6月末以降となります。
また、2時間58分42秒(2011年福知山)の自己記録を持つ51歳の福永智洋選手は、今大会の目標タイムは3時間8分。
1ヵ月半前の防府マラソンを3時間12分27秒でまとめた時には、今大会に向けての準備は万全かと思われました。
しかし、1月に風邪をひいた影響などで思い通りのレース運びができません。
それでも、持ち味の堅実な走りで、安定したラップを刻んでいき、3時間13分32秒でフィニッシュしました。
大会史上最多の3402名のランナーがスタートラインを越えて行った2016別府大分毎日マラソン。
スタートの12時の気象コンディション(主催者発表)が、気温6.5度・北北西の風0.8メートルと、数字上はやや低い気温ながらも、この大会にしては風が穏やかな晴天の下でレースが始まりました。
それでは、両選手によるレポートをご覧ください。
■和田選手の完走記
今回のレースは、13名のIPC登録男子選手が出場し、リオに向けて走りましたが、推薦順位第3位の座をかけての、熊谷選手(T12)と私との実質的な一騎打ちのレースとなりました。推薦順位第1位はすでに堀越選手(T12)が決めていて、推薦順位第2位は岡村選手(T12)が確実視されていました。
序盤から先行した熊谷選手に私が終盤追い上げ、ようやく追いつけたのは41Kすぎでした。私はレース序盤から中盤にかけ、冷静に自分のペースを想定通りにリズムよく刻み、後半にくるだろう勝負どころで、いつでもいける心の準備をしていました。
最初から前を走る熊谷選手は全く見えないものの、35Kの折り返しくらいからじわじわギアを変えていき、追い風にも乗っかり、かなり体は動いていました。
前半20K伴走のGさんとのリズムもっぴったりで、中盤までのペースがよかった証拠ですね。
当初、40Kまでのどこかでは、熊谷選手の姿を捉えたいなと思ってはいました。
しかし、行けども行けども姿がありません。折り返しでも、後半伴走のNさんが熊谷選手の姿を見なかったということでしたし、一瞬、棄権でもしたのかなとも思ったくらいでしたが、39K地点の沿道にいた私の妻が、熊谷選手との差が1分だと情報をくれました!!
「え、そんなに前にいるのか、残り3Kしかない。万事休すか…」と心が折れそうになりましたが、「いや、いくしかない。」、見えない相手に対してすでにペースはあげていましたが、ここからは大爆発させるぞ!と気合を入れ直し、ギアをもう一段階あげました。
すると、40K手前くらいで、熊谷選手の姿がやっと遥か遠くに見えてきました!!
「見えた!見えた!!」とのNさんの声。まだかなり遠いようでしたので、残り距離で追いつけるのか、競技場勝負くらいにもちこめるか、でも、あれこれ考えずにもういくしかないとまた気合を入れなおしてギアを更に入れ直して追いかけました。更に力をこめてペースアップですね!!まだまだいけると自分に言い聞かせて。
41K地点くらいだったでしょうか。現地に応援にきてくれてたTさんがでっかい声で、「16秒差!!」と叫んでくれました。
「おお!!確実に縮められてる!!これはもう一発ギアをかえていくしかない!」苦しいけど、更に更にあげるしかないと、そこからまたがつんといって、何度ペースをあげたことでしょうか、ラスト1K付近で熊谷選手をとらえることができました!!
追いつきはしましたが、熊谷選手も私も気合十分、どちらも譲りません。
ここで勝って、リオに1歩でも近づきたいという気持ちは同じで、このレースにかける思いは他のどんな選手にも負けていなかったと思います。
結局、熊谷選手も自己ベストを3分42秒更新する素晴らしい走りでしたし、私も1分53秒の自己ベスト、T11の日本記録更新でしたので、お互いに最高の準備をして、非常にハイレベルな競り合いができたと思います。
競技場でのラスト勝負にまでもちこまれると、私よりもスピードのある熊谷選手の方が有利になりますので、追いついてからは一気に勝負をしかけました。またまた更にペースアップです!!残りの最後の力をふりしぼって。
前に出たとしても、ぴったりつかれると今度はこちらが苦しくなるので、もう無我夢中でのラストスパートでした。その甲斐あって、ゴールの競技場に入る前に順位をあげることができました。感動的なフィニッシュを迎えることができ、ゴール後、Nさんと喜びを分かち合いました。
結果的には、私がわずか20秒先着することができましたが、ほぼ互角の闘いで、ともに全力を出し尽くしました。私の今回の好記録は、強いライバルと競り合ったおかげでマークできたものであることは間違いありません。選考レースにふさわしい、歴史に残る白熱した名勝負でした。
これで私は、推薦順位第3位の座を獲得できたわけですが、マラソンでの代表枠はまだ確定ではありませんので、5000mで代表権(T11)をきっちり獲得できるよう、春以降のIPC公認大会にも挑戦していきます。
日本代表メンバーの公式発表までにはまだ時間がありますので、それまでにやれる
ことはすべてやっていきます!
いつもたくさんご声援、ありがとうございます!!今回のレースでナイス伴走してくださり、強化合宿でも厳しいトレーニングをしてくださっているGさんとNさんはもちろんですが、これまでに一緒に走ってきてくださった皆さんのおかげで、今回の好結果があったと思っています。大変感謝しています。ありがとうございます。
まだまだここからもがんばっていきますので、今後ともご声援、どうぞよろしくお願いいたします。
[ラップタイム]
・5キロごと *最後は2.195キロ
18分40秒、18分32秒、18分03秒、18分13秒、
18分20秒、18分18秒、18分37秒、17分42秒、7分21秒
*35キロ~40キロの17分42秒は35番目、40キロ~フィニッシュまでの7分21秒は13番
目(男子完走者2854人中)。
*なお、以降に掲載の順位は、いずれも男子完走者2854人中。
・前後半
前半:1時間17分29秒 後半:1時間16分17秒
[順位の推移]
中間点 1時間17分29秒 184位
35キロ 2時間08分43秒 127位
40キロ 2時間26分25秒 102位
フィニッシュ 2時間33分46秒 88位
■福永選手の完走記
福永@ブラインドです。
自分は、別大マラソンに参加させていただき、
吉本さんが書いてくださったように、3:13:32でした。
今回は、積極戦法で、前半からいったつもりでしたが、
思うようにペースが上がらず、
後半から終盤、多少の落ち込みは覚悟のうえでしたが、
踏ん張りきれなかった、という感じです。
要因としては、
1月に入ってから、かぜをひいてしまい、
疲労は、完全にとりのぞけましたが、
パフォーマンスも、下がってしまった
自分は一切取材など受けてないのですが、
毎日新聞やTBSテレビなどの雰囲気にのまれてしまった
別大国道のバンクで、余分に脚を使った
35km以降、走路が狭くなり、前のランナーさんを
ぬきにくくなった
などなど、ひとつひとつは数十秒レベルだと思うのですが、
いろんなことが積み重なって数分レベルのロスになったかなと思っています。
結果的に、防府のほうが速かったので、
あらためて、フルマラソンの奥の深さを実感しています。
それでも、てらやんが沿道から応援くださったり、
走行中にいろんなかたが声をかけてくださり、
関西で走っているような気分でした。
また、今回の前半伴走のかたを紹介してくださったかたの
沿道応援が、40kmすぎにあり、
最後の最後まで、気持ちをきらすことなく
燃えに燃えて走りきることができました。
3:13:32は、自分の別大コースレコードですし、
記録をねらって複数走ったシーズンの平均タイムが
3:12:59.5というのは、過去最速なので、またがんばろうと思います。
それでも、わだっちの2:33は、当てられるのに
自分の3:08は外すっていうのは、なんでやねんって感じですけどね。
自分のフルマラソンは、今シーズンはこれでおわりなので
これからはトラックでしっかり走っていこうと思っています。
そして、ゼロからまたつくりなおして、
来シーズンのフルも、またがんばろうと思っています。
お世話になりますが、
よろしくお願いいたします。
[ラップタイム]
・5キロごと *最後は2.195キロ
22分32秒、22分57秒、22分49秒、22分59秒、
22分44秒、22分43秒、23分22秒、23分20秒、10分06秒
・前後半
前半:1時間36分18秒 後半:1時間37分14秒
[順位の推移]
中間点 1時間36分18秒 2177位
35キロ 2時間40分06秒 2002位
40キロ 3時間03分26秒 1882位
フィニッシュ 3時間13分32秒 1834位
参考
[大会開催時間帯の大分市の天候] *気象庁観測値
12時 気温6.0度 北北東の風2.3m/s 湿度59%
13時 気温6.3度 北北東の風2.4m/s 湿度61%
14時 気温7.0度 北北東の風1.6m/s 湿度53%
15時 気温7.6度 北北東の風2.5m/s 湿度54%
■代表枠争いの行方(IPC男子の部)
2016リオパラリンピックマラソン代表の推薦順位2位・3位を決定するこの大会、まずは、序盤から岡村正広選手が推薦順位2位の座を着々と固めていき、2時間27分24秒で、IPC男子の部の1位でフィニッシュします。
一方、白熱化したのは、和田選手と熊谷選手の推薦順位3位争い。
パラリンピック代表に必要な2時間37分48秒はもちろん、自身の持つT11男子の日本記録(2時間35分39秒)を更新するペースでレースを進める和田選手に対し、熊谷選手はその差を徐々に広げていき、35キロでの和田選手と先行する熊谷選手の差は2分14秒。
これまでは終盤の走りに課題があった熊谷選手でしたが、今大会ではそれを克服してきたことを示し、この時点での2人の勝負の決着は、熊谷選手に分があるように見えました。
しかし、和田選手は、35キロから、その熊谷選手をさらに上回る走りを見せます。
まず、40キロまでの5キロを17分42秒と大幅にペースアップ。
そして、さらにその勢いを増した和田選手は、大分川に架かる舞鶴橋への上りにも気付かなかったほどの勢いで猛追して、熊谷選手を逆転。
フィニッシュまでの2.195キロは7分21秒でカバーして、そのままIPC男子の部の2位に入り、和田選手が同代表推薦順位3位を確定させました。
大会公式サイト
https://www.betsudai.com/