※この記事は以下の2つの記事をまとめたものです。
「2016別府大分毎日マラソンでの和田選手と福永選手」
「2016別府大分毎日マラソンで自己ベストの凛々さん」
2月7日に、2016リオパラリンピックマラソン代表最終選考レースとしてIPCの部が実施された2016別府大分毎日マラソン。
和田伸也選手が2時間33分46秒(男子T11日本記録)、近藤寛子選手は3時間18分05秒で、各同男女の部で2位に入り、その結果、2016リオパラリンピック視覚障害マラソン代表推薦順位のそれぞれ3位と2位を確定させ、同代表入りに大きく近づきました。
また、同男子の部に出場した福永智洋選手は、調子が良くなかったものの、いつもの粘り強さを発揮して、3時間13分32秒でした。
なお、パラリンピックの視覚障害マラソンの各国選手枠は原則3名ですが、代表の正式決定は6月末以降となります。
■和田選手・近藤選手、代表推薦順位枠内へ
まず、男子。代表推薦枠の最後の1つを、和田選手と熊谷豊選手での争いになるとの事前の予想通りにレースが進んでいきます。
和田選手が代表推薦枠入りするには、熊谷選手が2015IPCマラソン世界選手権(ロンドン)でマークした2時間37分48秒を上回り、同選手に先着することが条件となってきました。
求められていたペースは十分に上回っていた和田選手ですが、その和田選手に先行する熊谷選手は、今大会では、課題だった中盤以降のペースダウンを克服してきた走りを見せ、後半以降も徐々に差を広げていきます。
そして2人の差は、35キロ地点では2分14秒までに広がり、この時点での勝負の行方は熊谷選手に分があるように見えました。
しかし、和田選手は、35キロから、その熊谷選手をさらに上回る走りを見せます。
40キロまでの5キロを17分42秒と大幅にペースアップした和田選手は、熊谷選手との差を一気に詰めていき、いよいよ終盤になったところで、代表推薦枠を巡る勝負は一気に白熱化。
さらに勢いを増した和田選手、舞鶴橋東詰への上りにも、ものともせずに熊谷選手を猛追していき、ついに2人の順位が入れ替わります。
その後も和田選手のスピードは全く衰えることなく、フィニッシュまでの2.195キロは7分21秒でカバー。
なお、35キロからフィニッシュまでの7.195キロの25分03秒は、別府大分マラソン男子全完走者2854名中26番目のタイムでした。
一方の女子。代表になるには、既に代表推薦順位1位を決めている道下美里選手を除くトップでフィニッシュするしかない、と決意していた近藤選手。
序盤から、2か月半前の防府読売マラソンでマークした自己記録を上回るペースで、積極的にレースを進めていきます。
5キロを23分台のラップを刻み続け、25キロ過ぎでは、道下選手に次ぐ2位と目標としていた順位に上がった近藤選手でしたが、30キロからの5キロは24分台に落ちてしまいます。
しかし、続く40キロまでの5キロを再び23分47秒と盛り返すと、後ろの選手との差をさらに広げていき、目標とする順位を確実なものにしていきました。
フィニッシュタイムは、防府マラソンでの自己記録を約3分更新するものでしたが、40キロまでの全ての5キロごとの区間で、その時のタイムを上回るものでした。
大会史上最多の3402名のランナーがスタートラインを越えて行った2016別府大分毎日マラソン。
スタートの12時の気象コンディション(主催者発表)が、気温6.5度・北北西の風0.8メートルと、数字上はやや低い気温ながらも、この大会にしては、風が穏やかな晴天の下でレースが始まりました。
それでは、各選手のレポートをご覧ください。
■和田選手の完走記
今回のレースは、13名のIPC登録男子選手が出場し、リオに向けて走りましたが、推薦順位第3位の座をかけての、熊谷選手(T12)と私との実質的な一騎打ちのレースとなりました。推薦順位第1位はすでに堀越選手(T12)が決めていて、推薦順位第2位は岡村選手(T12)が確実視されていました。
序盤から先行した熊谷選手に私が終盤追い上げ、ようやく追いつけたのは41Kすぎでした。私はレース序盤から中盤にかけ、冷静に自分のペースを想定通りにリズムよく刻み、後半にくるだろう勝負どころで、いつでもいける心の準備をしていました。
最初から前を走る熊谷選手は全く見えないものの、35Kの折り返しくらいからじわじわギアを変えていき、追い風にも乗っかり、かなり体は動いていました。
前半20K伴走のGさんとのリズムもっぴったりで、中盤までのペースがよかった証拠ですね。
当初、40Kまでのどこかでは、熊谷選手の姿を捉えたいなと思ってはいました。
しかし、行けども行けども姿がありません。折り返しでも、後半伴走のNさんが熊谷選手の姿を見なかったということでしたし、一瞬、棄権でもしたのかなとも思ったくらいでしたが、39K地点の沿道にいた私の妻が、熊谷選手との差が1分だと情報をくれました!!
「え、そんなに前にいるのか、残り3Kしかない。万事休すか…」と心が折れそうになりましたが、「いや、いくしかない。」、見えない相手に対してすでにペースはあげていましたが、ここからは大爆発させるぞ!と気合を入れ直し、ギアをもう一段階あげました。
すると、40K手前くらいで、熊谷選手の姿がやっと遥か遠くに見えてきました!!
「見えた!見えた!!」とのNさんの声。まだかなり遠いようでしたので、残り距離で追いつけるのか、競技場勝負くらいにもちこめるか、でも、あれこれ考えずにもういくしかないとまた気合を入れなおしてギアを更に入れ直して追いかけました。更に力をこめてペースアップですね!!まだまだいけると自分に言い聞かせて。
41K地点くらいだったでしょうか。現地に応援にきてくれてたTさんがでっかい声で、「16秒差!!」と叫んでくれました。
「おお!!確実に縮められてる!!これはもう一発ギアをかえていくしかない!」苦しいけど、更に更にあげるしかないと、そこからまたがつんといって、何度ペースをあげたことでしょうか、ラスト1K付近で熊谷選手をとらえることができました!!
追いつきはしましたが、熊谷選手も私も気合十分、どちらも譲りません。
ここで勝って、リオに1歩でも近づきたいという気持ちは同じで、このレースにかける思いは他のどんな選手にも負けていなかったと思います。
結局、熊谷選手も自己ベストを3分42秒更新する素晴らしい走りでしたし、私も1分53秒の自己ベスト、T11の日本記録更新でしたので、お互いに最高の準備をして、非常にハイレベルな競り合いができたと思います。
競技場でのラスト勝負にまでもちこまれると、私よりもスピードのある熊谷選手の方が有利になりますので、追いついてからは一気に勝負をしかけました。またまた更にペースアップです!!残りの最後の力をふりしぼって。
前に出たとしても、ぴったりつかれると今度はこちらが苦しくなるので、もう無我夢中でのラストスパートでした。その甲斐あって、ゴールの競技場に入る前に順位をあげることができました。感動的なフィニッシュを迎えることができ、ゴール後、Nさんと喜びを分かち合いました。
結果的には、私がわずか20秒先着することができましたが、ほぼ互角の闘いで、ともに全力を出し尽くしました。私の今回の好記録は、強いライバルと競り合ったおかげでマークできたものであることは間違いありません。選考レースにふさわしい、歴史に残る白熱した名勝負でした。
これで私は、推薦順位第3位の座を獲得できたわけですが、マラソンでの代表枠はまだ確定ではありませんので、5000mで代表権(T11)をきっちり獲得できるよう、春以降のIPC公認大会にも挑戦していきます。
日本代表メンバーの公式発表までにはまだ時間がありますので、それまでにやれる
ことはすべてやっていきます!
いつもたくさんご声援、ありがとうございます!!今回のレースでナイス伴走してくださり、強化合宿でも厳しいトレーニングをしてくださっているGさんとNさんはもちろんですが、これまでに一緒に走ってきてくださった皆さんのおかげで、今回の好結果があったと思っています。大変感謝しています。ありがとうございます。
まだまだここからもがんばっていきますので、今後ともご声援、どうぞよろしくお願いいたします。
(以上、和田選手の完走記)
[ラップタイム]
・5キロごと *最後は2.195キロ
18分40秒、18分32秒、18分03秒、18分13秒、18分20秒、18分18秒、18分37秒、17分42
秒、7分21秒
・前後半
前半:1時間17分29秒 後半:1時間16分17秒
■近藤選手の完走記
凛々@滋賀です。
リオから採用された視覚障がい女子マラソン。
最終の選考レースの別府大分毎日マラソンにすべてをかけて取り組んでまいりました。
これまでわーわーずの多くの皆さんの激励をいただき、関西のブラインド女子の心意気をもって全力で走りました!
3位のポイント争いになれば、ポイントを持たない私には不利な状況、とにかく自力で2位の座を勝ち取るしかリオへの道はありませんでした。
序盤、自分のペースを守り3番手をキープ、20キロでもまだ疲れはなくほぼイーブン、25キロすぎでまさかの2番手に。
このままいけばリオへの切符を手にできるかもしれない?
終盤、年明け早々のレースで転倒して橋の欄干で頭を強打した名残のむちうちが影響したのか、首に力が入らず上体がふらふらと今にも倒れそうになりながらも、あと少しでリオを手にできると力を振り絞ってゴールに向かいました。
ゴールの瞬間、私を支えてくださったすべての方々に感謝の気持ちでいっぱいになりました。
タイムは3時間18分05秒の自己ベストでした。
ポイント争いになることなく推薦順位第二位内定となりました。
ほんとうにありがとうございました!
また、直接皆さんにごあいさつにうかがいたいと思いますが、まずはこちらでの御礼とさせていただきます。
正式決定は6月以降となりますが、リオまでの日々を大切に怠りなく過ごしていこうと思います。
今後ともよろしくお願いいたします!
追伸
関西では放送されなかった別大の一時間延長放送。
中継車がずっと等間隔で前を走る、生まれてはじめての経験をしました(笑)
追い付こうとしたわけではないけど、中継車めがけてはしったせいか38キロからペースあがってました。
私のゴールが番組終了のタイミングだったので、けっこう感動的で、何度みても泣けます(笑)。
(以上、近藤選手の完走記)
[ラップタイム]
・5キロごと *最後は2.195キロ
23分12秒、23分30秒、23分02秒、23分15秒、23分26秒、23分29秒、24分07秒、23分47
秒、10分17秒
・前後半
前半:1時間38分03秒 後半:1時間40分02秒
■福永選手の完走記
福永@ブラインドです。
自分は、別大マラソンに参加させていただき、
吉本さんが書いてくださったように、3:13:32でした。
今回は、積極戦法で、前半からいったつもりでしたが、
思うようにペースが上がらず、
後半から終盤、多少の落ち込みは覚悟のうえでしたが、
踏ん張りきれなかった、という感じです。
要因としては、
1月に入ってから、かぜをひいてしまい、
疲労は、完全にとりのぞけましたが、
パフォーマンスも、下がってしまった
自分は一切取材など受けてないのですが、
毎日新聞やTBSテレビなどの雰囲気にのまれてしまった
別大国道のバンクで、余分に脚を使った
35km以降、走路が狭くなり、前のランナーさんを
ぬきにくくなった
などなど、ひとつひとつは数十秒レベルだと思うのですが、
いろんなことが積み重なって数分レベルのロスになったかなと思っています。
結果的に、防府のほうが速かったので、
あらためて、フルマラソンの奥の深さを実感しています。
それでも、てらやんが沿道から応援くださったり、
走行中にいろんなかたが声をかけてくださり、
関西で走っているような気分でした。
また、今回の前半伴走のかたを紹介してくださったかたの
沿道応援が、40kmすぎにあり、
最後の最後まで、気持ちをきらすことなく
燃えに燃えて走りきることができました。
3:13:32は、自分の別大コースレコードですし、
記録をねらって複数走ったシーズンの平均タイムが
3:12:59.5というのは、過去最速なので、またがんばろうと思います。
それでも、わだっちの2:33は、当てられるのに
自分の3:08は外すっていうのは、なんでやねんって感じですけどね。
自分のフルマラソンは、今シーズンはこれでおわりなので
これからはトラックでしっかり走っていこうと思っています。
そして、ゼロからまたつくりなおして、
来シーズンのフルも、またがんばろうと思っています。
お世話になりますが、
よろしくお願いいたします。
(以上、福永選手の完走記)
[ラップタイム]
・5キロごと *最後は2.195キロ
22分32秒、22分57秒、22分49秒、22分59秒、22分44秒、22分43秒、23分22秒、23分20
秒、10分06秒
・前後半
前半:1時間36分18秒 後半:1時間37分14秒
■上位選手を含む結果
・IPC男子の部
1位 岡村正広 2時間27分24秒
2位 和田伸也 2時間33分46秒(T11男子日本記録)
3位 熊谷豊 2時間34分06秒
12位 福永智洋 3時間13分32秒
・IPC女子の部
1位 道下美里 3時間03分42秒
2位 近藤寛子 3時間18分05秒
3位 藤井由美子 3時間24分06秒
■大会開催時間帯の大分市の天候 *気象庁観測値
12時 気温6.0度 北北東の風2.3m/s 湿度59%
13時 気温6.3度 北北東の風2.4m/s 湿度61%
14時 気温7.0度 北北東の風1.6m/s 湿度53%
15時 気温7.6度 北北東の風2.5m/s 湿度54%
■大会公式サイト
https://www.betsudai.com/